TRAVERING

なぜ旅に出るのか?そこに地球があるからさ。

バンコク楽宮ホテル/谷恒生

   

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バンコク、ホワランポーン駅近くにあるチャイナタウン。そこにはかつて楽宮ホテルという伝説の安宿があった。2005年に閉鎖され、いまも建物はそのまま放置されているという。当時は薄暗い廊下と部屋があり、部屋のカギは外からでもかけられるようになっていて、ひとつ下の階は売春婦の寝床だったらしい。つまりは、売春婦を閉じ込めるための監獄部屋が安宿に転じたのではないかと勘ぐりたくなる混沌ぶりだ。

この小説では、そんな楽宮ホテルを舞台に70年代のバックパッカーの生態がリアルに描かれている。ドラッグ、売春、憂鬱。しがない日本円もバーツになると大金となり、日本では買えないモノを買い漁るあさましき日本人。近年の発展が著しいタイではどうなのか分からないが、ぼくが訪れた数年前のタイや、今なお発展途上な国の沈没宿では、この本に書かれていることと同じことが起きていることだろう。

限りなくノンフィクションに近い小説。同じバックパッカーだからこそ胸に刺さる、いや胸につかえる、そんな物語たちだった。

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