TRAVERING

なぜ旅に出るのか?そこに地球があるからさ。

これからサーフィンをはじめようと考えているあなたに。

   

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サーフィンは楽しい。でも、初心者に優しくない。

ぼくはサーフィンを本気ではじめて今年が3年目。「本気で」といっても海に通った日数は150日ぐらいだろうか。まだまだアップスもロクにできないレベルで、サーフィンの世界ではズブの素人からズブが抜けたぐらいのビギナーであるが、ぼくは「サーフィンをはじめたい」と思ったころ、わからないことだらけでかなり苦労した。だからこそ、その頃の自分が感じていた疑問に対して答えてみたいと思う。

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1.レッスンに意味はあるのか?

あまりない。ぼくは20回ぐらい通っただろうか。最初の1回はよいと思うのだが、2回、3回と受けても効果は薄い。レッスンというのはあくまで「サーフィン体験」であり、後ろから押してもらって波のスープの上に立って「やった!いまツルッと滑ったんじゃない!?」以上の経験はできない。そして、ほとんどのスクールがそれ以上のことを教えるノウハウを持たない。というか、根本的にサーフィンというもの自体が言葉で簡単に教えられるものではないのだ。あなたが「あの上手い人みたいに波に乗りたい」と思ってしまったならば、続きはyoutubeのHowto動画を見ながら自分なりにトライ&エラーを繰り返す。そうして、ロマサガ的にピカーン!と習得する瞬間を待つしかない。これがサーフィンの難しいところで、自動追跡カメラでも買わない限り、自分の中で正しいと思われる感触を暗中模索で確かめていくしかないのである。

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2.ボードは買ったほうがよいのか?

あきらかにレンタルでは間に合わない。レッスンに何度か通った結果、そう悟った。そして、amazonでいちばん安かった6.8fを買った。ロングとショートの中間のファンボード。リーシュやフィンなどがセットで5万円ぐらい。それを持ってスクールに行くと何度か鼻で笑われた。「そんなボードじゃ乗れないよ」って。そうして貸し出されるのはロングでソフトなボードである。たしかに長くて浮力のあるボードのほうが立ちやすい。ただしそれは「スライム」をひたすら倒してレベル上げするか、少しリスクを上げて「いっかくウサギ」を倒してレベル上げするかの違いだ。結論をいえば、ボードなんてなんでもよいと思う。メルカリやヤフオクは高いがブックオフやリサイクルショップなら2万円もせずに買えるはずだ。それよりも1ヶ月ぐらい毎日、海に入るほうが大切だ。ちなみにぼくは2年目にファンボードでもロクに立てない時点でショートに乗り換えた。そこからの成長速度が早くなった気がしている。

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3.サーフィンはお金がかからないのか?

車を持っていて、波がある場所に住んでいる人はお金がかからないだろう。しかし、ぼくの場合はビジターである。飛行機にボードを積んで移動して、宿に泊まり、たいていは車をレンタカーしてサーフィンしている。ボードやウェットは買えば終わりであるが、サーフィンをする環境に費やしたお金は決して安くはない。もうひとつ言えば、ぼくのようなビギナーは湘南のような人がたくさんいるところで練習しても上達しないと思う。人が少なくてコンスタントに波があるところで練習しようと思えば、やはり、サーフィンはゴルフ級にお金がかかるスポーツと思っておいたほうがよいのではないだろうか。

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4.パドルをするのに筋肉は必要なのか?

テイクオフして波に乗るためのパドルに筋肉は必要ない。おばさんでも子どもでも上手い人は波にひょいひょい乗っていく。テイクオフに最も必要なのはタイミングの熟練であり、力ではない。しかし、パドルの筋肉は必要である。なぜかと言えば、海に長時間いるためである。筋肉がないと波に乗ったあとに沖に出るためのパドルのスタミナが持たない。肺のスタミナではなく筋肉のスタミナである。もちろん、波を追いかけるにも、乗ってくる人を避けるにもパドルは必要で、そのためのスタミナも必要だ。だからパドル筋は必要なのだ。かといって、ジムや家で筋トレするより、毎日、海に通ったほうが早い。1ヶ月、毎日やれば、それなりに筋肉はついてくるはず。そうなるとサーフィンはより楽しく、楽になる。

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5.波の見方がわからない?

これがいちばん難しい。人が密集しているところに行けば、そこは乗れる場所であるはずだが、ビギナーがそんなところに突っ込んでいっても邪魔になるだけだ。だから、人がいないところで練習しようと思うわけだが、最初のうちは波を見る目が養われていないので、どこで波を待てばよいのかさっぱりわからない。何度も通って「昨日は人がいたのに今日は誰もいないな」的なところを見ているうちに、まず「波の割れ目」が見えてくる。が、割れ目が見えたからといってそこを狙えばよいのかといえば、そう単純ではない。「割れてもすぐに消えてしまうタルい波もあれば、掘れすぎてショルダーを狙うべきときもある」。ココである。言っている意味がわからなくなってくるのだ。サーフィンは知識がなかなか役に立ってくれない。むしろ実践で体感して学ぶものである。幸運にもぼくは師匠と出会い、師匠にくっついて丸一ヶ月ほど毎日、海に通うことができた。この師匠が選ぶ波を真横で実感していくことで波の見方がわかってきた(Windyの見方も)。この体験がなければ今でも波がわからないままであっただろう。だから、あなたも師匠を見つけてほしいと思う。

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6.波が怖い?

木崎浜に行ったとき、波が大きく見えて海に入る勇気が持てなかったことがある(今思えばムネぐらいではなかったか)。恋ヶ浦に行ったとき、カレントを知らずに漕いでも漕いでも岸に戻れなくて泣きそうになったことがある(ローカルが助けてくれた)。どれも最初期の頃だがトラウマになりそうだった。こればっかりはサイヤ人理論。限界を超えると強くなる。波の見方を教えてくれた師匠がそばにいる安心感からムネ、カタ、アタマ、アタマオーバーと波を間近に見ながら、突っ込んで、ぐるんぐるんに巻かれて、でも大丈夫、これくらいならケガはしない、そうやって体感することで波を知り、怖さが薄らいでいく。アタマサイズに挑むころにはパドルの筋肉も自然に追いついてきて、沖に流される恐さもなくなるはずだ。そうして、気がつけばモモサイズぐらいじゃ海に入る気がしないなぁ、などと調子に乗り出すのである。

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7.やっぱり波に乗れない?

きのうは上手くいったのに、きょうは上手くいかない。サーフィンの上達は一進一退の繰り返しだ。今でもそう。ちょっと風が入っただけで波質が変わり波に乗れなくなって「クッソー」とつぶやきながらもニコニコしちゃう中毒症状があらわれているぼくだが、はじめのころはもっと絶望的に「波に乗れない!」と海上で苦悶していた。先に述べたが、人がたくさんいるところに行ってもまず乗れない。人がいないところに行くと波数が少なくなるし、そもそも波は来るのか? と不安になってくる。そうしているうちに、どんどん流されて、実際に「そこで待っていても無駄だよ」という位置にいてしまったりする。やはり、多くの人が言うように「海に入る前に波を見て乗る波を決める&海に入ってから岸の目標物を定めて動かないようにする」ということに尽きるわけだが、ビギナーのうちはそれができない。言っていることがよくわからないからだ。つくづく言葉というのは概念のラベリングに過ぎないのだと気付かされる。それは当初の「コンプライアンス」と同じで「コンプライアンスとは何か」を実際に体感して会得してからでないと言葉が意味をおびてこない。まず、体感があってコンプライアンスという言葉も使いこなせるようになってくるのである。

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8.結局、どこで練習すればよいの?

ぼくは旅をする仕事柄、大洗で本格的にサーフィンをはじめて、宮崎、種子島、沖縄、奄美は滞在型で、スタンプラリーレベルだと、御前崎、伊良湖、土佐清水、志布志、千葉、湘南、バリ、神戸レイーズも行ったことがある。ビギナーの割には色んな海でサーフィンしてきたのではないかと思うが、ポイント、時期、地形、干満によって波質がぜんぜん違ったりするのがまたサーフィンの難しくておもしろいところだ。
ビギナーがどこで練習すべきかといえば、まずは人が少なくてコンスタントに波があるところだと感じている。種子島がダントツに良かったが、アクセスやポイント選びのハードルが高い。その意味で宮崎のメジャーなポイントはコンスタントに練習できてビギナーに最適ではないだろうか。ちなみに、沖縄や奄美は満潮時しかできないので1日1ラウンドしかできないし、人工サーフィン施設はお金がかかりすぎるし海では通用しないと個人的には思っている。

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サーフィンははじめたばかりの頃がいちばん辛い。

何が辛いかって、まわりが上手い人だらけで邪魔をしてしまうのが辛かった。波を待つ場所が悪かったり、沖に出るときに進路妨害してしまったり。3年目の今、ようやっと、まわりが見えてきて自分の気持ちも楽になってきた。結果的に、「1ヶ月ほど毎日、海に通うべし」という言葉を繰り返すことになってしまったが、それができる人は少ないかもしれない。ただ、ぼくの場合は、「1ヶ月ほど毎日、海に通うべし」を5ヶ月ぶんぐらい繰り返したことで、サーフィン初心者のいちばん辛い時期を脱出できた気がしている、今日このごろである。ちなみにサーフィンを本気ではじめたのは34歳の頃。サーフィンはいつはじめても遅くないはずだ。

 - バリのり