【バリのりⅤ】湘南デビュー!ひとりで波に乗ることはできたのか?
2016/11/23
湘南の海に、サーファーとして、はじめて立った。
当たり前だが、バリの海とはぜんぜん違う。どんよりとした黒い海。ラッシュガードではなくウェットスーツを着る冷たい海。おまけに味もバリより潮辛い。
何より驚いたのは、沖に出ることなく、波打ち際で波が立っていることだ。
バリでは、インサイドとアウトサイドで「クラス」が分かれていた。初心者はインサイドで乗り、上級者はアウトサイドで乗る。そこには、まるで見えない境界線があるようで、初心者が上級者が浮かんでいるエリアに近づいていくこともなければ、上級者が初心者がいるインサイドまで波に乗ってやってくることもない。その手前で波を降りて、また元のポジションに戻っていく。しかし、茅ヶ崎にはインサイドがない。アウトサイドしかない。
海が、狭い。一言で言えば、そう思った。
僕が訪れた6月23日の夕方は、いわゆる「いい波」に当たったらしく、おそろしい数の黒い人たちが海に浮かんでいた。平日だが、休日と変わらない人の多さだと地元の人は言っていた。みんな、ウェットスーツを着ているから黒い。バリのカラッとした明るさとは、実に対照的だ。
とはいえ、アウトサイドまで出なくても、アウトサイド。ということは、パドリングで沖に出るまでに体力を使う必要もなくラクちんである。そして、ボードに座って波待ちしてみると、左右にはたくさんの人たちが浮いている。前にも後にもいる。みんなギラギラしていて、波が来たらいっせいにパドリングをはじめて、次々と波に乗っていく。何度もぶつかりそうになったし、何度も相手の邪魔をしてしまった。
正直なところ、湘南は、ぼくがリラックスできる海ではないと思った。
周りの人の邪魔になっていないか、気になってしかたがないのだ。ぼくが、北海道までバイクで旅していたとき、広い海に1人しかサーファーがいない海岸線をたくさん見てきた。ああいう静かな海でサーフィンがしたい……
とはいえ、言い訳ばかりしていても仕方がない。「出禁になっても構わない」という気持ちで何度もチャレンジした。波の見極めなんてできないのだから仕方がない。行くしかないのだ。しかし、打ちのめされた。バリで7日間合宿して覚えたテイクオフ……何度もドボンしたり、相変わらずパドリング不足で波に追い越されたりしながら、それでも、2回、乗れたのだ。
たったの2回。だけど、自分の力でパドリングして波に乗り、立ち上がることができた。バリでは一度も成功しなかったので、これがはじめてである。ちょっと冴えない湘南デビューだったけれど、サーファーとしての道のりははじまったばかり。誰とも比べることなく、ゆっくり成長していきたい。やっぱり、サーフィンは最高に気持ちいのである。
結論、「バリのり」のような「サーフィン合宿」をしても、湘南デビューはかなりほろ苦い。
しかし、サーフィンの成長は人それぞれ。センスのある人なら難なく湘南デビューも可能だろう。湘南は人が多いが、波自体はバリより易しいので乗りやすいはずだ。
しかし、サーフィンは、ぼくが思っていたよりはるかに奥深く、難しい。さながら日本の交通事情のように狭くて細い波の上を、針の目を縫うように横乗りしていくサーファーたちを見てそう思った。