TRAVERING

なぜ旅に出るのか?そこに地球があるからさ。

世界で最も貧しい大統領ホセ・ムヒカの言葉から学ぶ。

   

ホセ・ムヒカは世界で「最も貧しい大統領」だからスゴイのではない。日本人を含む、世界中の誰もが理解できる言葉で、資本主義というシステムの問題点を指摘しているからスゴイのだと思う。

新しいことは何も言っていない。経済学者であれば、資本主義が産声をあげたころから危惧していた未来。それが実際に目に見える形として表れている今、ホセ・ムヒカが歩んできた人生とともに語られるメッセージが、誰よりも説得力を増す言葉となっている。

穏やかな表情からは想像できないが、かつては社会主義者であり、ゲリラ戦士。14年もの投獄期間を含めて、何度も最前線で死線をくぐり抜けてきた。だからこそできる「顔」であり、だからこそ言える言葉なのだ。

 

一時は社会主義者でありながら、資本主義国の大統領となり、バランスを取りながら政治でウルグアイという国を変えてきた。だからこそ響く言葉がある。

ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てば、この惑星はどうなるでしょうか。

私たちがグローバリゼーションをコントロールしていますか。グローバリゼーションが私たちをコントロールしているのではないでしょうか。

 

大統領になっても官邸には住まず、農村にある小さな家から自分でオンボロ車を運転して仕事場に通っていた。だからこそ、説得力が生まれる。

私は貧乏ではない。質素なだけです。

貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ。

 

日本人はもっと時間がほしいというが、問題は何のために時間を使うのか。人生には限りがある。だからこそ、人間としての時間をお金に支配されるものにしてはいけない。現在の資本主義はあきらかにバランスを欠いている。だからこそ、ホセ・ムヒカの言葉に心を傾ける必要があるのだと思う。

私の同志である労働者たちは、8時間労働を成立させるために闘いました。そして今では、6時間労働を獲得した人もいます。しかしながら、6時間労働になった人たちは別の仕事もしており、結局は以前よりも長時間働いています。なぜか?バイク、車などのローンを支払わなければならないからです。

物であふれることが自由なのではなく、時間であふれることこそ自由なのです。

人がものを買うときは、お金で買ってはいない。そのお金を貯めるために割いた人生の時間で買っているのです。

 

比較的豊かになると富を失うことへの恐怖が生まれる。そうなれば、お金があっても不幸に感じる。逆にお金がなくても目標に向かって前進していれば幸せを感じられる。そこには希望があるから。幸せとは生きていることに心から満足していること。そのためには大義が必要で、何かに情熱を傾けることが不可欠。経済というのは、不足しているものがあるから生まれる。たとえば、水には昔は経済はなかった。しかし、水が不足している今、ミネラルウォーターが経済に組み込まれている。これは、テレビでホセ・ムヒカが語っていた話だが、実に分かりやすい。

もし、私がお金を貯めることを目的にしたら、お金を盗まれる心配をしなくてはならないし、お金を隠した穴を埋めて回らなければならなくなります。

人間のもっとも大事なものが「生きる時間」だとしたら、この消費社会主義は、そのもっとも大事なものを奪っているのですよ。

 

結局、政治でしか変えられない。ムヒカは、自分の人生を振り返りながらそう話す。ゲリラでは変えられないということだ。

お金があまりに好きな人たちは、政治の世界から出て行ってもらう必要があります。

私は国民の多数派と同じ生活をしているだけです。代表民主制は、多数派の人が決定権を持つ世界だから。

裕福な人々は、世界を彼らの視点、つまりお金の観点からとらえます。たとえ善意に基づいて取り組んでいるときでも、彼らの世界観、生活感、それに何かを決定する観点を提供するものは、お金です。

壁をつくることで、国民は政治から離れていきます。もっとも良くないことは、国民から政治が嫌われること。そうなると、政治は失敗に終わります。

 

最後に、ぼくが好きなホセ・ムヒカのやりとりを紹介しよう。有名な話ではあるが、「あなたにとってネクタイとは何ですか?」と聞かれた彼はこう答えたという。

「人生を複雑にするだけで、なんの役にも立たないただの布。」

ぼくも、旅人になってからというもの、スーツやネクタイ、革靴はすべて、実家に送ってしまった。スニーカーすら履くことがなく、冬でもほとんどの期間をサンダルで過ごしている。靴をはかなければ、靴下もいらないのである。

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