TRAVERING

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日本一の富士山と日の出を映し出す「精進湖」 決意を新たにする元旦の朝

   

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日の出。それは新しい一日が生まれる瞬間。何気なく過ごしていても、この世界には毎日「今日」が生まれているのだ。

中でも、最も新しい日の出が、元旦の初日の出。日本では1月1日の朝に「年神様」が降臨すると信じられてきた。年神様とは穀物の豊穣を司る神様。農耕民族である日本人は、前年までの感謝とともに新しい一年の豊作を神様に祈願してきたのだ。たとえ現在農耕に携わっていなくとも、その精神は変わらず受け継がれているのではないだろうか。

「新しい一年が、最高にして最幸の一年になりますように」

その願いをかけるべく2016年の元旦は、日本一の富士山、そして「逆さ富士」が浮かび上がる精進湖(しょうじこ)で、日本ならではの日の出を迎えてみるのはいかがだろうか。

初日の出にふさわしい場所、“偉大なる富士山麓の知られざる精進湖”

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山梨県南都留郡富士河口湖町にある精進湖。河口湖や山中湖とは違って開発が進んでいないこともあり、昔ながらの大自然が残る絶景地だ。その景観は「東洋のスイス」と呼ばれ、富士五湖の中でも最も静謐な場所だと言われている。美しさのあまり、富士山だけでなく精進湖も世界遺産に含まれているのだという。

――100年以上前の話をしよう。

富士山に魅せられたイギリス人「ハリー・スチュワート・ホイットウォーズ」は永住の地を求め、1年がかりで富士山麓を巡り歩いた。そのとき辿り着いたのが精進湖。「富士山が一番美しく眺められる場所」として諸国に伝えられたことで、「ジャパン・ショージ」として海外にも広く知られている。

かつての天皇陛下は外国人から聞かれたという。「ショージとは、どれほど素晴らしい所なのか」と。

精進湖は、日本人として知らないわけにはいかない場所なのだ。

五感が、六感が、すべてが奪われ、揺さぶられる。そのとき湖面に何が浮かぶのか。

精進湖はわずか5kmの小さな湖。ぐるりと一周しながら自分だけの日の出スポットを探すのもいいだろう。

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たとえば、精進湖の西側にある「精進湖キャンピングコテージ」の他手合浜(たてごはま)。シーズンオフとなるテントサイトは静寂に包まれている。湖に沿って数台の車が並んでいても、それぞれがエンジンを切って静かに夜明けを待っている。
どことなく神聖な空気がここにはある。

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夜より深い漆黒の影。真夜中でも存在感のある黒い富士山。

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張りつめた冷気の中、湖面からモウモウと朝霧が立ちのぼる。神秘的な空気に息をのむ。

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空が明るむと同時に、湖面に浮かぶ「逆さ富士」。

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富士山の手前にある大室山が見えてくる。まさに「子抱き富士」。

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日の光が富士山頂に射し込んで、天使の輪のように輝きはじめる。

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――途中から、言葉を失った。

日の出を迎える時間というのは、自然の中に映し出される「自分」と対話する時間なのかもしれない。太古の日本人にとっても同じであったはずだ。

富士山に魅きつけられ、圧倒され、感動する。今を生きる人の中に眠る太古の昔から受け継がれてきた遺伝子が呼応しているせいかもしれない。彼らが見てきた景色がそこにあり、生きてきた時間以上の過去が、そこに映し出されるのではないかと思うのだ。

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朝日のあとは

朝日を迎えたあとは、いま一度、一周してみることをオススメする。とくに精進湖の北側から見る富士山は、一切の建物が視界に入らず圧巻である。絶景で知られる「パノラマ台」への登山口もあり子どもの足でも2時間あれば往復できる。

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富士スバルラインをドライブして5合目まで登ってみるのもいい。標高2305m。下界とは一変して、吹きつける風は強く冷たいが、冷気というより霊気に近い。壮大にして荘厳な富士山を目の当たりにすることで、力をもらうとともに謙虚な気持ちになれる。

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冬の寒さが身にしみたら「ほうとう不動」。ほうとうのメニューは1種類。選択肢はない。それがまたいい。

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「道の駅なるさわ」近くにある温泉「ゆらり」では、富士山を眺めながら身体を温めることもできる。

明日も、新年も、日が昇る限りオトコの人生は続く

日の出のあとも見どころが続く精進湖。朝日をシャワー代わりに浴びた体は、どこか感覚が研ぎ澄まされていて、目に映るすべてが新鮮に感じられる。そして何度も思い出す。精進湖に映し出されたその光景を。

その日の出はきっと、一年のはじまりにふさわしい時間になるはずだ。

 - トラベルエッセイ