TRAVERING

なぜ旅に出るのか?そこに地球があるからさ。

パリの国連で夢を食う。/川内有緒

      2015/05/26

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「国連で働いてみたい。」ふわりとそよぐ風ぐらいに一瞬の気持ちなら、誰もが思ったことがあるはず。難関すぎる倍率はなんと2000倍。でも、その実態がこんなにもユニークだったとは。ページをめくるたびに、左手に感じる残りのページが少なくなっていく。それを名残惜しく感じたのはとても久しぶり。

 

「パリの国連で夢を食う。」著者の有緒さんは元国連の正社員。世界最高給の公務員っぷりに驚き、パリ生活の理不尽さに笑い、そこに住む人たちの面白さに憧れる。「国連で働きたい!パリにいきたい!」という想いがムクムクと膨らんでいく。それと同時に、読み終えた瞬間、焦りという高波が全身をさらっていった。

 

前作の「バウルを探して」を読んだときもそうだった。どうしてこんな深みのある文章が書けるんだろう。ちょうどいい石みたいに、手ざわりがあって、心地いい重みがあって。影響を受けて長文を書いてみる。すると僕の文章はどうしようもなく軽くて、いびつで。それが浮き彫りになって悔しくて、「それでも追いつきたい!」って思うのだ。

 

人生が顔に表れるように、人生は文章にも表れる。本には「タイミングよく転がってきたサッカーボールでシュートするみたいに生きてきただけ」と書かれてあったけれど、言葉の余白から伝わってくる。サイドで何度も上下動しているような気配が。そのぶれない意志のようなものが、手ざわりだったり重みだったりするんだろうな。

 

「文章がうまい」というか「文章が美味い」。いつか、自分の人生を本にするチャンスがきたら。有緒さんのような文章が書ける自分でいたい。「本は読んだら捨てる」がモットーの僕が絶対に捨てずに持ち歩いている数少ない本のひとつです。

 

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