めがね
2015/11/09
夏の終わりに訪れた与論島。そこではじめて「めがね」のロケ地だと知った。とある韓国人は映画を観て与論島にハマり、移住も決めて、今では島の人気者だという。人の、それも外国人の人生を変えるほどの映画とは?調べてみると、キャッチコピーはこうだった。
何が自由か、知っている。
旅から帰ったら絶対に観よう、そう思った。結論から言うと、かなり心に残る映画になった。一行のコピーのようなセリフが要所にあって、その度に思考させられる。「ぼくの場合はどうだろう?」それが記憶の爪あとになって、物語に引き戻されたあとも残るのだ。
才能ありますよ。ここにいる才能。
それだけじゃだめですか?何か理由がないとだめですか?
たそがれるのに何かコツとかあるんでしょうか?
大切なのは焦らないこと。焦らなければそのうちきっと。
旅は思いつきで始まりますが、永遠には続かないものですよ。
詳しくは、映画を観てみるのが一番ですが、こんな話。
都会から来たらしき主人公。島の時間や人の距離感に馴染めないでいます。観光しようと思っても何もない。「たそがれ方」もわからない。何もない島に行きたくて行ったのに、何もしないでいることができない自分。
かき氷屋さんに行って「いくらですか?」と聞く主人公に、店主は怪訝な顔をする。野菜を育てている人は野菜を、子供は折り紙で作った工作を、マンドリンを弾いてお返しする人も。お金でしか対価を払えない自分の無力さに気付かされたりもする。
「編み物って空気も一緒に編むっていいますよね」と声をかけられる主人公。キレイな網目ですね、と言われて主人公はこう答えます。「何度編んでもそうなんだよね。キレイだけどつまらない。」
どの感覚もすごく共感する。どちらかというと旅慣れていると自分でも、主人公のような感覚はすごくある。
最後に唐突にドイツ語の詩が語られる。何を言っているのか分からなかったが、日本語に訳すとこういう意味らしい。
何が自由か知っている
道はまっすぐ歩きなさい 深い海には近づかないで
そんなあなたの言葉を置いてきた
月はどんな道にも光をそそぐ
暗闇に泳ぐ魚たちは宝石のよう
ぐうぜんニンゲンと呼ばれてここにいる私
何を恐れていたのか 何と戦ってきたのか
そろそろ持ちきれなくなった荷物をおろす頃
もっとチカラを やさしくなるためのチカラを
何が自由か知っている
何が自由か知っている
スタッフロールを見る限り、詩を書いたのは太田恵美さん。「そうだ 京都、いこう」を書いたコピー界では知らない人はいない大御所コピーライターです。さすがだなぁ。キャッチコピーとともに、胸に刺さる映画になりました。