TRAVERING

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「職業は武装解除」瀬谷ルミ子さんから旅学した6つの言葉

      2016/05/21

職業は武装解除

職業は武装解除。聞きなれないのは当然。誰もやっていないことをやろう。それを突き詰めてきた瀬谷さんの半生が語られている。きっかけは新聞で見かけた一枚の写真。ルワンダ内戦。そんな誰かの人生を動かすような一言を残せる表現者でありたいと思うと同時に、映画「ホテル・ルワンダ」を思い出す。奪う者が一転、奪われる側になる悲劇。ツチ族とフツ族のルワンダ内戦を知れる映画だ。ドキュメンタリーではないが、その映像は当時大学生だった僕に深く刻まれた。刻まれたまま眠っていた。今もだ。瀬谷さんは違う。動いた。ルワンダだけでなく、アフガンやソマリアといった超紛争地域まで。その行動力の源となる精神をこの本から学べると思う。

1.「できない」ことと「やらない」ことは決定的に違う

障害を持つ家族がいる瀬谷さん。身近な人が困難な人生に立ち向かう姿を見てきたこともあり、「やらない言い訳をしない」というポリシーを持っているという。とにかくやってみること。そう謳っている指南書は多いが、瀬谷さんの場合、それは既に前提にすぎず、自分にできないことという見極めもかなりシビアにしていると感じる。専門性を極めて自分を本当の意味で知っている人はその域にいる。もちろん、こういう本では「できない」ことは語られていないのだが、行間から逆にそこを僕は学んだ。

2.肩書きなしで身ひとつで現場に放り込まれても、変化を生める人間になる

二十歳でルワンダをボランティアで訪れた瀬谷さん。しかし、学生でスキルも足りなかったことで「自分は役に立たない」と強く感じたそうだ。そして、「元●●職員」と、過去の栄光を持ち出しているうちは、過去の自分に負けていると言いきる。一流は肩書きを仕事にするが、超一流に肩書きはない。肩書きでは当てはまらない仕事をしていることで、名前が職業になっている。

3.目標に対して不可欠でなければ、すぱっと切り捨てて、選んだものに集中する

狭く、深く、誰もやっていないことを。瀬谷さんは自分の強みを生かすことを強く意識している。留学時代は、シェアメイトとなった日本人とも英語で会話。授業は自分の性格と能力を考え、関心がある科目いくつかに集中。数十冊の専門書を持って1週間家から出ることなく書いた論文は、過去数年間で最高点だったそうだ。瀬谷さんだからできること、とは思わない。それくらいなら自分にもできそうと思わないだろうか?

4.未来の自分にとって、負債となるか、投資となるかは、自分次第

これ以上は、日本に帰ってからの生活費がゼロになる。そんなとき、瀬谷さんが取った選択は?「こうなったら賭けだ。未来の自分にとって、これが負債となるか、投資となるかは、自分次第だ」である。僕も誰に何を言われようが、そういう選択ができる人間であろうと思う。保険なんてクソ食らえだ。

5.どれだけ成功イメージを描けたか、シミュレーションが見た目を変える

交渉するとき、自分にとって好ましい状況になるシナリオのイメージを強く描けるようになると、自信がつくし、安心する。そのちょっとしたポジティブな自信が、交渉の際に自分のまとう雰囲気と、それを見た相手に与える影響は大きい。この本にはそう書いてあった。プレゼンや企画のアイデア出しでも同じである。

6.すごいなぁと思う人に出会ったとき、逆算して目標にする

その年齢になったとき自分はその人に追いつけるだろうか。全部は無理でも、自分の得意な分野だけでもその人を越えるには何をすべきか考える。僕が思うに、大切なのは「あこがれ」にしないこと。「今すぐやるべきこと」に変換するチカラさえあれば何も恥じることはない。その人の年齢が自分より下であってもだ。10年後に今のその人に追いつけているなら、それはそれで誇るべき自分であるはずだ。

職業は武装解除

日本には戦後に世界一の速さで復興を成し遂げた歴史がある。日本は唯一の被爆国として(地理的特性も大きいが)世界でも稀な中立性を保ってきた歴史がある。この「戦後の復興経験」と「世界での中立国」という2つの特性は、世界を旅をした日本人なら誰もが気づくことである。どこでも入国できるパスポートが証明してくれるし、パキスタンやイランなど多くの国の人たちにその2つの特性について褒められるからだ。でも僕は「だからこそ日本にしかできない平和活動がある」というところに思い至っていなかった。その時代に生きてもいないくせに、いい気分になって「まあ、あんたんとこも頑張りなよ」てな返事しかしてこなかった。あくまでコピーライターとしてではあるが、その視点を忘れずに旅をしたいと学ばせてもらいました。

「戦後の復興経験」かつ「世界での中立国」である日本しかできない平和活動とは?

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