TRAVERING

なぜ旅に出るのか?そこに地球があるからさ。

【更新中】奈良で暮らしながら旅のガイドを書いている志賀が本当にオススメしたい場所

      2017/12/21

遺された戦前の遊具。生駒山上遊園地

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「生駒には日本最古の遊具があるんやで」

ぼくは、奈良に来てまず、奈良在住の先輩に会いに行った。奈良生まれ奈良育ちである先輩から最初に教えてもらったのが「生駒山上遊園地」。

なんでも、戦前には全国各地に遊園地があった日本だが、戦争がはじまると深刻な鉄不足に陥り、すべての遊具を解体して戦争の道具にしていったという。しかし、唯一、解体されなかった遊具がある。それが、生駒山上遊園地にある「飛行塔」。山の上にある背の高い塔であったため、監視塔として使えるということで、最後まで残されたそうだ。

さっそく現地に向かってみる。生駒駅でロープウェイに乗り換えて、生駒山を登っていく。そして、辿り着いたのは、なんとも時代を感じる遊園地。なんと入場料はいらない。そこには、「サイクルモノレール」「くるくるコースター」「わくわくトレイン」など、カタカナの遊具が並ぶ中、ひとつだけ「飛行塔」という前時代的なネーミングの遊具が残っている。

先輩の話には続きがあった。

この飛行塔はかなり老朽化が進んでいる。戦時中の解体をまぬがれた飛行塔も、ついには解体が検討されているというのだ。先輩は「残してほしい」と言っていた。

「この遊園地は、俺が子どもの頃からあってん。オカンやオトンによく連れてきてもらったんやけど、もっと言えば、オカンやオトンも子どもの頃に連れてきてもらったっていうねん。最近、俺にも子どもが生まれたけど、オカンやオトン、つまり、じいちゃんばあちゃん世代と孫世代が一緒に遊べる、同じ遊具で同じ思い出をつくれるってことやねん」

時代やテクノロジーが進化しようが、子どもたちは大昔の遊具を楽しむことができる。全力で、感動することができる。この日も、たくさんの子どもたちが生駒山上遊園地で遊んでいたが、その様子は尊いものに感じた。それを見ていると、やはりぼくも「残してほしい」と思うのだった。

──参拝が、山拝。大神神社

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大神神社に本殿はない。鳥居を通して、三輪山を拝む。つまり、山そのものが神様なのだ。「日本最古の神社」と言われる大神神社だが、それは決して名ばかりではなく、日本最古の神社のありかたを現代に伝えているといえよう。

さて、本題はここからだ。なんと御神体である三輪山に参拝するだけでなく、「山拝」することもできるのだ。高さ467m、山頂まで1時間。水以外の飲食は禁止、カメラも禁止。最終受付は14時まで。遭難しないよう、名前や住所、電話番号を紙に書くと、鈴がついた襷(たすき)を借りられる。本来は、神主さんが着ているような白い袴(はかま)を着て山に入るべきなのだが、そうもいかない一般客のために、簡易的な袴の襟=襷を貸してくれるのだ。それを身につけ、いくつかの儀式を済ませて聖なる山に入っていく。

とはいえ、土日ともなれば参拝客も多い。誰かとすれ違うたびに「こんにちは」と挨拶を交わしながらの山登りは朗らかなハイキングそのものである。しかし、ふと、人の流れが途絶え、風にそよぐ木々だけに包まれるときがある。その瞬間はやはり、聖なる山にいることを実感するのだった。

まるで山の中に自分しかいないかのような、神と対峙する時間。狼の姿をした「大神」が現れて、違う世界に連れて行かれそう。そんな空気を感じていると、シャン、シャン、シャンと、鈴の音が聞こえる。襷についている鈴の音だ。人が、遠くから近づいてくることがわかるその気配に、少しだけホッとするのであった。

 

そうめんの本気を見たければ「千寿亭」に行け。

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素麺=そうめんで人を唸らせるのは難しい。よほど繊細な舌でもなければ、100円ショップのそうめんも、1000円する高級そうめんも、味や食感の違いは感じづらい。つゆに関してもそう。「素」がつくぐらいのシンプルな麺には、素のスープがあうのだろう。総じて、オカンのそうめんと大差ない外食に1000円もの大金をはたくことになる。

ここまでの話に共感してもらえるならば、「千寿亭」のそうめんを食べて見てほしい。大神神社から15分は歩くだろうか。しかし、その価値はある。ここにあるのは、オカンには作れないであろう、本気の「三輪そうめん」だ。シソを効かせたピンクの梅そうめん。温かい出汁の旨味を引き出す“かぼす”そうめん。冷たいつゆには胡麻を練りこんだ太めのそうめん。和風イタリアンなトマトそうめんや、春巻きのようなそうめんまで。決して奇をてらったものではなく、そうめんの正統進化系といえる日本らしいそうめんが味わえる。

そうめんといえば「三輪そうめん」。その単語は、いつ覚えたかわからないほど幼いころから知っていた。きっと、関西育ちの両親がなにかにつけて「三輪そうめん」と口にしていたからだろう。それほど有名なのも当然で、三輪は「そうめん発祥の地」。大神神社の神様には素麺作りの守護神もいる。

大神(おおみわ)が転じたのであろう三輪駅に来たのなら、どこでも食べれるような「そこそこうまいラーメン」より、やっぱり三輪そうめんを食べるべし。

日本の素麺たるやを知らない外国人の方や、千寿亭まで足を運べないという日本人は「そうめん處 森正」へ。この店もシンプルながら、実に手の行き届いた素麺だった。帰り道で「みむろ最中」を買って帰るのも忘れずに。

 

“境界の彼方”は、ここにあった。

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自殺。
辞書には「自ら命を絶つこと」という意味で記載されている。
おそらく、ぼくが試みることは一生ない行為だ。
それは道徳的観念ではなく、もっと根本的理由に起因しているのだが
──その話はまた後にしよう。
とにかく今、彼女は死のうとしている。
ここで物語の進行は大きく二つに分かれる。
ひとつは主人公が積極的に物語へ参加して進行していく方向。
ひとつは主人公が消極的で勝手に物語が進行していく方向。
あきらかに後者のタイプだったぼくは、
このときはなぜか前者を選択した。

と、まぁ、ぼくが重度のアニオタであることは、ON THE TRIPのガイド文章にちょこちょこ忍ばせているアニメ要素によって察してほしいところなのだが、あの「境界の彼方」の舞台は奈良である。制作会社である京都アニメーションは、その緻密な背景描写によって数々の聖地を生み出している。が、それによる弊害もあるようで、作中で「花野寺ショッピングセンター」と呼ばれているこの場所の住所は禁則事項とされている。ここにたどり着くまでに、かなりの検索を要したが、訪れた甲斐はあった。アニメを見ていない人にとっては何の記憶にも残らない公園かもしれないが、ぼくにとっては色々なシーンや名言を思い出す「聖地」にほかならない。「物語」はかくも場所に特別な意味を与えるのだ。

 

──ON THE TRIPのオフィスはバスである。実際に奈良で暮らしながら旅のガイドをつくる。その第一弾が奈良である。滞在期間は約2ヶ月。その中で様々な人に教えてもらった場所の中で、ON THE TRIPのコンテンツにはしていないけれど、ぼくが個人的にオススメしたいスポットを紹介していこうと思う。

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