TRAVERING

なぜ旅に出るのか?そこに地球があるからさ。

自分の人生の物語を編むということ

   

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これまでの自分の人生を編んでみることには、とても興味深い発見がある。ぜひ試してほしいと思う。

人生にはさまざまな選択肢があり、それに迫られるたびにぼくたちはなにがしかの選択をしていくわけだが、そのときにそれを選んだ理由というのはひとつではない。たとえば、「なぜ会社を辞めたの?」と聞かれても理由がたくさんあって「どうして?」と聞かれるたびに答えが変わることになる。「いちばんの理由」なんてものはありはしないのだ。

しかし、あとから振り返ってみると、つまり「自分の人生の物語を編纂する」という行為を通して見つめなおしてみると、必然的にその複数の選択肢からいちばん意味を持つひとつを選ぶことになる。後付けだ、と言われればその通りかもしれない。しかし、人生のコンテキスト=文脈を編むのはよほどの有名人でもない限り自分しかいない。語り出すのは自分しかないのだ。もっとも、有名人にしても、優秀なジャーナリストにインタビューを受けることではじめて考えて語り出すのだろう。

このようなことから、「伝記」と呼ばれるものは後付けの物語であることが多いのかもしれない。それも年老いた人物が語る自身の半生なんてものはなおさらだ。物語を編んでいく過程で、分かりやすく、語りやすく整理された記憶は、その細部が塗り替えられ、同質の重みを持っていたにも関わらず、片方を忘却してしまうことすらあるだろう。

しかし、それは否定されるものであってはならない。それでいいのだ。語るべき物語を持っていること、それこそがいちばん大切なことだと思うから。

>>ニュースで、その国を嫌いにならないでください。志賀章人の物語

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