TRAVERING

なぜ旅に出るのか?そこに地球があるからさ。

旅を発信するには?コピーライターが考える旅の企画の作り方

      2016/11/23

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この夏、僕は小笠原を旅しました。仲間と5人で、プロジェクトを持って。

はじめは、ひとつの「手づくりウェブサイト」でした。それが、Webメディア「YADOKARI」での記事連載、みなとみらいの「BUKATSUDO」での展示会、さらには「日経MJ」での新聞掲載やラジオ出演 。

はじめは知り合いにしか発信できませんでしたが、少しずつ外へ外へと広げていくことができました。今回は、僕がそんな旅を選んだ理由と、その作り方についてご紹介したいと思います。

 

僕が旅を「プロジェクト化」した理由

僕の職業はコピーライターです。それは、広告のキャッチコピーを書く仕事。ですが、その前に「企画屋」でもあります。クライアントの商品がどうやったら話題になるか。それを考えることが本当の仕事です。そのため に商品を知り、話題になるコンセプトを考え、どんな言葉で、どう発信するかを考えています。

でも、打ち合わせの場では「1,000GPR(テレビCMの出稿量)は必要」とか「Twitterで拡散して……」とか話しているものの、理論に “実感” がついてこない。そんなモヤモヤがありました。

そこで、思ったんです。僕は、「自分が伝えたいことを、話題化できるだろうか」と。「自分がいちばん好きなことを、思いっきり広告してみよう」と。 学生時代からバックパッカーをしたり、就職してからも『手ぶらでインド』 に行ってみたりと、とにかく旅が好きだった僕は、まず旅を発信してみることにしたのです。

 

旅の「企画」のつくりかた

STEP1:コンセプトを考える

広告の仕事も、まずはコンセプトづくりから。それは商品が持つファクトを、世の中の “今” に響くメッセージに変えること。

たとえば、小笠原には「船は1週間に一度、しかも片道25時間」という、他の旅行先にはないファクトがありました。つまり、旅程は船の就航に合わせるしかないのです。

たとえば1週間しか会社を休めないとする。すると、往復50時間を超える移動時間を除けば、実質3日くらいしか現地にいられない。一隻の船がピストン運行している状況なので、次の船を待つとするとプラス1週間の休みが必要になります。もしも小笠原をゆっくり旅しようと思ったら「2週間の休み」を取るしかありません。

そのとき、僕の世の中に対する疑問とリンクしたのです。それは「日本人はもっと会社を休んでもいいんじゃないか」ということ。社会でも今、ワークライフバランスについて語られる機会が増えています。そこで、「たった2週間の休みもない人生を続けられますか?」というメッセージをこめて、『スーツを脱いで、旅に出よう。』というコンセプトを掲げることにしました。

STEP2:仲間を集める

コピーライターは「僧侶」です。デザイナーという「魔法使い」、営業という「戦士」が揃ってはじめて広告がつくれます。旅の企画も同じ。いや、それ以前に、みんなで旅をすると、もっと旅が楽しくなると思ったんです。

僕の場合はシェアハウスに住んでいたので、シェアメイトに声をかけました。すると5人の暇人、いや「仲間」が集まりました。そのうちの一人はフォトグラファー。そこで、彼が撮った写真に僕がキャッチコピーをつければ広告がつくれるね、という話になりました。それが『PHOTOBA』です。この記事に挟みこまれているスーツ写真がそれです。全部で25作品ほどつくりました。

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ほかにも、メンバーの中に「元アイドルマネージャー」がいました。そこで、小笠原でアイドルの原石を発掘してみることに。小笠原の海のようにキレイな心を持つ、裏の顔がない“純度100%のアイドル”を見つけて写真を撮らせてもらう。それを『アイランドルプロジェクト』と名づけました。

このように、それぞれの「仕事や趣味」を「旅」とかけ合わせることで、企画はつくれるのではないかと思います。

STEP3:コンテンツを発信する

そんなプロジェクトを発信するWebサイト、それが『オガシェアラ!』です。由来は「ogasawara × share」。出発の前にWordPressでサイトをつくりました。僕のようなWeb初心者でも、10時間程でこれくらいは作れます。それに、旅って夜は暇だったりしませんか?そんな時間を使って、旅をしながらリアルタイムで記事をサイトにアップすることにしました。もちろんFacebookやTwitterでも拡散します。

5人の仲間がいるおかげで発信力も5倍です。さらに、Youtuber全盛の今、キャッチーな動画を作ればもっと拡散するかもしれない。そう考えて、動画コンテンツも発信してみました。

しかし、訪問者は1日平均50人、多くても200人ほど。サイトへの流入経路もほとんどがFacebookでした。つまり、サイトを見てくれているのは友人ばかりで、Facebookの外に出ていくこと、世の中に広告することの難しさを突きつけられる結果となりました。

 

旅を旅で終わらせない

BOOST1:記事連載「スゴイ!が日常!小笠原」@未来住まい方会議byYADOKARI

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もっと多くの人にプロジェクトを知ってもらうにはどうするか。考えたのは、既に発信力のあるメディアの力を借りることでした。

広告業界でも、テレビの枠を借りたり、Yahoo! のバナーに出稿したりしますよね。もちろん僕らにバナー広告を出稿できるお金なんてありません。そこで、記事連載です。

ここで大切なのは、プロジェクトのコンセプトに近いメディアを探すこと。僕の場合は「豊かな暮らしとは何か」をテーマにしている「未来住まい方会議 by YADOKARI」でした。以前から大好きなメディアでしたが、都会から遠く離れた小笠原で見つけた「人本来の豊かな暮らし」を記事にすること。それは、『スーツを脱いで、旅に出よう』というコンセプトにぴったりだと思ったんです。

すぐに、小笠原の旅を企画書に落とし込み、かつ原稿5本分をフルで書き下ろしてメールを送りました。あとは、担当者様の御心の広さにただただ感謝。ありがたくも連載を許可していただけることになったのです。

 

BOOST2:リアル展示会「言葉と写真のPHOTOBA展」@BUKATSUDO

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ウェブだけではなく、リアルの場で発信することも必要だと感じていました。広告業界でいうサンプリングイベントや店頭展開ですね。そこで『オガシェアラ!』のコンテンツのひとつでもあった『PHOTOBA』の25作品に、新作を加えた全50作品を、みなとみらいの「BUKATSUDO」で展示させていただきました。

BUKATSUDOとは、横浜みなとみらいのランドマークタワーに新しくできた「大人の部活が生まれる街の新しいシェアスペース」。実は、旅に行く前から、「この場所で展示会がしたい」と担当者の方にお願いしていました。ありがたくも、その方が僕の話を覚えてくださって いて、オープンニングパーティー当日に展示会をさせていただけることになりました。

リアルの場を持つことで、偶然その場所に訪れた方にもプロジェクトを知ってもらうことができました。それに、小笠原で出会った方たちも足を運んでくださり、色々な意味で報われる幸せな時間でした。

 

BOOST3:11月7日号の「日経MJ新聞」に掲載

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BUKATSUDOでの展示会は好評をいただきました。さらに、展示を通して 『Travelin-Bu(トラベリン部)』という部活を立ち上げました。それは、『オガシェアラ!』のように旅を発信する部活です。ここでも、 BOOST1の記事連載のように、BUKATSUDOというメディアにあわせて、プロジェクトを進化させようとしたのです。

より多くの仲間と、より様々な旅へと活動規模を拡大していきたい。そんな思いで結成しましたが、メディアの注目が集まるBUKATSUDOの影響力もあり、一連の活動を新聞記事で取り上げていただけることになりました。さらには、その新聞を読んで興味を持ってくださったラジオ番組からも出演依頼をいただきました。小笠原の旅は現在進行形で広がっているんです。

 

話題になる旅は、誰にでもつくれる

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お金もない。有名人でもない。おまけに僕は会社員。それでも、ここまで旅を話題化することができました。

もちろん簡単ではありませんでした。旅に出たのは7月なのに、記事連載も、展示会も、新聞掲載も、すべては11月前後のことです。では、空白の数ヶ月は何をしていたか?

それは、ただ、発信を止めなかったのです。記事を書き続け、次の一手を考え続け、企画を売り込み続けました。あきらめなければ、きっと誰でもできる はず。僕はコピーライターなので「書く」ことが武器になりましたが、職業が違えばより新しい武器や、発信方法も見つかるのではないかと思います。

「楽しかった」で終わらない旅は、より忘れられない思い出になるはずです。皆さんもぜひ、挑戦してみてください!

 - オガシェアラ!, 旅のお仕事