TRAVERING

なぜ旅に出るのか?そこに地球があるからさ。

アグルーカの行方/角幡唯介

      2015/05/29

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かつてフランクリン隊という探検隊がいた。1845年。今から150年も前の話だ。当時の北極圏は、今で言う月のようなもの。GPSがない、地図もない、そんな人類未踏の大地が広がっていた。そこに挑んだ129人の史上最大の探検隊。それが、ジョン・フランクリン率いるフランクリン隊だった。結果はなんと、129人全員死亡。船は氷河に閉じ込められ、壊血病や鉛中毒に悩まされ、カニバリズムに陥り、それでも歩いて生還を図ろうとした彼らは、誰一人として故郷の地を踏むことはなかった。そして今も、その最後の行方を解明したものはいない。

この本は、そんなフランクリン隊が歩んだルートを辿る旅。著者である角幡唯介さんの旅と、フランクリン隊の旅が並行して相互に語られていく構成が、読んでいてとても引き込まれる。うまい。うますぎて、途中から小説を読んでいるような、ノンフィクションではないような錯覚に陥る節もあった。

あとがきでは、このような話が語られていた。ーーテーマは風景の中に物語を発見することができるか。エピソードとは違い、シーンから何が滲み出しているかは、自分で読み取るしかない。しかも、北極という雪と氷のほかに何もない風景の中でーーその感覚は僕も分かる気がした。旅を文章にしていると、シーンが物語として開花するときがある。それは、文章化しているときにはじめて開けるときもある。それこそが、旅を書くことの醍醐味。北極圏でそれに挑むというのが、ストイックそうな著者らしく思えるのだけど。

角幡さんを知ったきっかけは、とあるトークショーでした。そのときは、犬を連れての局地の旅について聞かせてくださいました。極限状態に陥ると、ふだんじゃ見せないような自分が顔を出す。そういった前人未到の自分の中へと潜っていく、そんな探検を楽しんでいるようで、とにかくそのストイックさと頑固さがにじみ出ているような人だった。

そのときの話では、北極などの行き先はとにかく「決める」そうだ。手段や目的はあとから何とかする、というかついてくる。僕もふだんから「決めちゃう力」ということを重視しているので、とても共感できた。やりたいことに迷っている人がいたら、まずは決めちゃうことをオススメする。それがたとえ、北極を踏破するとう無謀な夢でも、角幡さんのように実現できるのだから。

以下は個人的な備忘録。「雪の砂漠」「犬は人間のウンコを食べる」「遺伝子をプールさせたがるイヌイット」

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