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「氷白くま屋」ってなんのこと? 桃鉄グルメぐり~鹿児島編~

   

ボンビ~! 決算直後にスリの銀次に持ち金ぜんぶ奪われる「あきひと社長」です。

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鹿児島の物件といえば「氷白くま屋」。

なにそれ? とわけがわからないまま、とりあえず買い占める。そうして物件名だけが頭にスリこまれたまま、元ネタを知らない物件は実に多い。

たとえば、伊勢の「ふくふくもち屋」。これもなんのことかわからなかった。しかし、大人になって伊勢を訪れたとき、偶然にも「赤福」のお店を訪れるのだ。

食べているときにハッとした。これがあの「ふくふくもち屋」に違いない!と。

この「氷白くま屋」もそうだった。調べるまでもなく、鹿児島のメインストリートである天文館通りを歩いていると、このお店がドーン!とあらわれたのだ。

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なにしろこの店構えである。ハッとするまでもなく確信した。これがあの「氷白くま屋」に違いない! よく見ると「氷白熊」とも書かれている。店頭に巨大なかき氷のオブジェがある通り、氷白熊とはかき氷のことだったのだ。

建物は4階層にわたって、喫茶、洋食、鉄板焼き、居酒屋と住み分けされているが、すべては「むじゃき」というお店である。どの階でもかき氷は食べられると聞いて店内へ。

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もはや、ミュージアム。

戦後まもなく食堂としてはじまり、1949年には「氷白熊」を発売。高度経済成長とともに躍進を遂げ、バブル崩壊後もとどまることなくインターネット通販、シンガポール出張などと販路を広げている。

そして、これがメニュー。

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「白熊」を頼んでみると。

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レギュラーサイズにして驚いた。あきらかにイレギュラー。ひとりでは食えない西郷サイズである。

僕はチキン南蛮ほどではないが、かき氷においても一家言を持っている。日光東照宮の境内にある茶屋で「天然氷」のかき氷を食べたことがあるのだが、このとき世界は一変した。

日光の天然水を「山」で凍らせた天然氷、それを削ったかき氷は、見た目からして違うのだが、そのやわらかい舌ざわりに悶絶した。舌の上で氷がふわっとふくらんだかと思うと、その瞬間に消えているのだ。

それはなぜか。天然氷は山で2週間以上かけてゆっくりと凍らせる。製氷機の氷が白くなるのは急激に冷やしすぎているせいだが、水は凍る際に徐々に不純物を押し出す性質がある。それを最大限に活かしつつ、雪すら不純物と見なす徹底した管理によって、密度の高い固い氷をつくりあげているのだ。

固い天然氷だからこそ、薄くスライスすることが可能になる。そうすると、器に盛った際に空気をふくみやすくなり、ふわっとする。それに表面積も大きくなるため、舌にふれて溶けるスピードもはやくなる。これが、本物のかき氷である。

それに比べると屋台のかき氷なんて、ドリンクバーの氷をかじっているようなものである。正直、氷白くま屋にも期待はしていなかった。が、しかし。

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ふわきえ!

ふわっと消えるではないか! 僕の一家言とはなんだったのか。おそらく日光の天然氷ほど選別していないはずなのだが、美味しさの前では理屈などたやすく溶けてしまった。

しかも、とろあま!

練乳だが、安っぽい甘さじゃない。お店の雰囲気とはギャップを感じるほど丁寧な甘さを感じるある。甘味にムラがないのである。氷に練乳を練りこんでいるのではないかと思うほどに練乳が行きわたっているのである。だからこそ、氷が溶ければ甘さも消える。

しかし、そびえる氷山はエベレスト。その壁はあまり高く、食べても食べても食べ進んでいる気がしない……そんなレポートが書けるかと思いきや、さまざまなフルーツ、寒天、和菓子まで紛れこんでいるから一向に飽きさせてくれない。

結果、翌日もリピートしてしまった。この度はストロベリー。ベビーサイズでも充分ヘビー。ストロヘビー。

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お気づきのかたも多いだろうが、コンビニで見かける「白くまアイス」のルーツがここ。かき氷にあんみつの具を乗せると白くまの顔のように見えたのが由来というが、そのルーツは鹿児島にあったのだった。

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続いて、「さつまあげ屋」。

桃鉄の元ネタは「徳永屋」とされている。さすがに本場はウマイ。

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しかし、僕がオススメしたいのは、揚げたてが食べられる「揚げたて屋」。

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揚げている様子を見せてもらうこともできる。

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話を聞いてみると、揚げたあとがまた興味深い。

さつまあげには専用の冷やしかたがある。急激に冷やしてはいけない。送風して徐々に冷ましていく。さわって確かめながらのデリケートな作業でありつつ、スピードも求められるという。

それが終わると、専用の冷蔵庫を使って中までしっかり冷やしていく。そうしないと発酵してしまい、納豆のように糸がひいてしまう。段階的に冷やしていくこの技術は家庭で再現することは難しい。まさに、ここでしか味わえないさつまあげなのだ。

ただし、それは宅配用のさつまあげの話。店舗では揚げたてが食べられることを忘れてはならない。

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さっそくいただいてみると、スーパーで売られているものとはあきらかに違う。アツアツのさつまあげがまたふわふわでウマイのだ。この場合、賞味期限も当日限り。これは鹿児島まで来て食べる価値があるだろう。

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鹿児島ラーメンもグルメぐり。元ネタは「ざぼんラーメン」とのこと。

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つけあわせは漬けもの。これにも驚いたが、さらに驚いたのは「かきまぜてから食べてください」と言われたこと。どんぶりの底には特製のタレがはいっていて、それをスープや具材と混ぜるのだ。まるでカレーライスをまんべんなく混ぜてから食べるように。

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チャーシューはもちろん黒豚。キャベツ、もやし、ネギ、揚げネギ、メンマ、キクラゲと、7種の神具はちゃんぽんの系譜も感じさせる。が、気になるのはやはりスープだ。まずは混ぜずにスープを飲んでみるとスッキリとした豚骨。しかし混ぜてみると。なんと甘みが増すのであった。

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それから何軒か鹿児島ラーメンを食べ歩いてみたが、共通していたのは「鹿児島ラーメンは甘い」ということ。鹿児島の醤油は日本一甘いとも言われるが、それが隠し味に使われているようだ。そこにキャベツの甘みも加わるのだろう。鹿児島人の味覚に少しだけ触れられた気がした。

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さて。

僕にとって桃鉄は旅への渇望の原点。それについては博多編で話した通りだが、全物件を丸暗記するほどにやりこんだのは「転校」があったからだと思っている。

小学5年生から6年生にあがるとき、僕は香川県から大阪府に引っ越すことになった。

引っ越し先では友だちが全然できず……なんてことはなかったが、自分が浮いているように感じることもなくはなかった。そんなとき、ひとりで家に帰ってスイッチを入れたのが桃鉄だった。そこには、香川県に住んでいたころの友だちとゲームを99年に設定して(桃鉄はプレイする年数を決められるのだ)やりはじめたデータが残っていた。しかし、その続きをやることはもう叶わない。

泣ける話につなげたいところだが、人生はそんなにうまく起承転結してくれない。

あろうことか僕は友だちのアカウントを「あかオニ」という最弱のAIに設定した。そしてAIとマンツーマンで99年をやりきった。たまに、あかオニが物件を買おうものなら、即座にぼくがアカウントを乗っとる。そして、僕があかオニを動かして借金におとしいれる。僕に貧乏神がつこうものなら引き取りに来させる。どっちがオニだかわからない。まさに鬼畜のしわざである。

それから20時間ほどを費やして99年を終えたとき、ひとりで迎えたエンディングは、対価に見合わないほどあっけないものだった。もちろん、全部門で「あきひと社長」が1位である。というか、70年を過ぎるころには全物件を僕が買い占めてしまって億万長者。まるで老後をやり過ごすがごとく、あるようでないような目的地を目指したり目指さなかったり自由気ままなサイコロ旅を続けていたのである。

もちろんキングボンビーは困るので、あかオニが目的地に着きそうになったら即座にアカウントをハックして目的地から遠ざける。まさに世界は意のまま、全知全能のゼウスである。

これが全然楽しくないのである。

億万長者で悠々自適な老後なんてまっぴらだ。小学6年生にしてそう悟った。そして、全物件を暗記していた僕は桃鉄を卒業した……そう、大学生になるまでは。

 

次の目的地は「熊本」です!

 

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